LinkIcon
LinkIcon  

大腸の病気

大腸の病気について、ここでは大きく以下のように分類します。
それぞれの疾患についてご説明しましょう。
 

主な大腸の病気

 < 器質性 >
●急性炎症  感染性腸炎
●慢性炎症  潰瘍性大腸炎クローン病
虚血性腸炎、薬剤性腸炎、大腸憩室症
●腫瘍性

 < 機能性 >
●過敏性腸症候群

 病気には「器質性」のものと「機能性」のものがあります。
 
「器質性」のものには、食当たりのようなものから、治りにくい慢性炎症、薬によるもの、がんなど腫瘍性の病気、色々ありますが、全体にものすごい勢いで急増しています。ただ、内視鏡検査が普及してきていることによって早い段階でみつかるようにもなっています。
 
それに対し「機能性」の病気はしらべてもなにも無いわけです。過敏性腸症候群というのは、最初に胃に物が入ると大腸が動く、胃結腸反射という反射の亢進によって、食べるとすぐにおなかが痛くなって下痢をする、典型的には3食食べるたびに、便が出てしまい、さらに5回6回となると、精神的なストレスもつよくなります。乗物に乗るのが怖くなったり、さらには、家から一歩も出られなくなり仕事に行けなくなったりと、社会的にも制約を受けてしまうような、深刻な状況になることもあります。


炎症性腸疾患

 
慢性の難治性の腸の病気の代表的なものが、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の2つです。両疾病とも国の難病指定になっています。
 
以下、順にご説明します。


潰瘍性大腸炎ですが、環境因子の変化、特に食生活の欧米化に伴い、急増しておりまして10年間で約2倍、登録患者数だけで九万人をこしていますが、実際ははるかにたくさんいるとも言われています。正確な原因はわかっていないのですが、自己免疫疾患といって、いわば、腸のアレルギーのようなもので、簡単に言えば、アトピー性皮膚炎という病気がありますね。これは自分で自分の皮膚を攻撃してしまうことによって皮膚がボロボロになってしまうわけですが、潰瘍性大腸炎は自分で自分の腸を攻撃することによって、下痢や粘血便をくりかえす治りにくい病気です。


クローン病はかつては日本人にはいないとまでいわれていましが、やはり、増加の著しい病気です。深い潰瘍ができ、激しい下痢と栄養障害がおきたり、腸が狭くなったり、穴があいてしまったり、肛門に重度の痔瘻ができるのも、この病気の特徴です。

 さまざまな腸炎、大腸の病気

 
炎症を引き起こす原因となる病気も、器質性の病気に分類されます。
ここでは、「虚血性腸炎」と「大腸憩室」をご紹介します。


虚血とは血のめぐりが悪くなることです。たとえば虚血性心疾患というのは心筋梗塞などの病気のことですが、大腸をやしなう血管が動脈硬化によって狭くなり、急につまってしまうことで起きます。それによって、潰瘍ができ腹痛と血便といった症状がでます。若い人でも、下痢や下剤の使用によって起きる事があります。

大腸憩室というのは、大腸の壁は厚さ4mmほどなのですが、大腸にも筋肉がありまして、ガスがたまったりする圧力によって、腸の筋肉が弱くなった場所にポケット状のへこみができることをいいます。70歳をこえると、50%の人にこの憩室がありますので、珍しいものではありませんし、なにも、悪さをしないことがおおいのですが、ここに便がたまることによって、炎症をおこし腹膜炎になったり、まれに、大出血したり、破れて穴あいてしまって、大変なことになることもあります。

 

腫瘍性腸疾患

 
ここでは、腫瘍性腸疾患として、「大腸ポリープ」と「大腸癌・直腸癌」、
また、深達度による分け方として、「早期癌」「進行癌」についてご説明します。

胃や胆のうにもポリープはよくできますが、これらの多くは良性で切り取る必要はありません。
 
大腸ではと言うと、「腺腫」(せんしゅ)という種類の腫瘍性のポリープが多く、これが、特徴でもあり、問題でもあります。
ただ、他にも、炎症性のものや腫瘍でなく、ほっておいてよいものももちろんあります。
がんになりやすいポリープとは、以前は2cm以上といわれましたが、1cm以上はすでにあぶない状態です。
 
大腸癌のできかたは、ふた通りありまして腺腫という前癌状態から移行していくのと、「de novo」といって、いきなり小さな癌ができるタイプがあります。これは扁平なかたちで表面型といわれるものに多くて小さくても危険な場合があります。
 
つぎに、5箇所、10箇所とたくさんできるような人も、リスクがたかくなります。
 
そして、常染色体優性遺伝である家族性大腸腺腫症というのがありますが、100個以上ポリープができるのが特徴で、必ずがんが発生し、20歳代でがんになることも多い病気です。

約30~40年前までは欧米に比べ、日本では大腸癌は少なく、めずらしい方の癌でした。
しかし、今の日本はというと、ものすごいいきおいで大腸癌は増えてしまっていて、欧米と差がないどころかアメリカやイギリスより実は多くなってしまっています。さらに、すでに女性では癌の臓器別死亡率の1位は大腸癌となっています。
「罹患率(りかんりつ)」といって大腸癌になる人の割合は急増していて、2015年には胃がんや乳がんを抜いて最も多くなるといわれています。また、これは、おもに、開腹手術を受けた患者さんの統計結果で、内視鏡で取れた早期がんを含めた統計では、今現在でも、他の臓器に比べ異常なほど多いがんとなっています。


これは表面型の早期がん、このような小さな癌は20年前まではほとんど見つかっていませんでした。欧米での大腸癌の歴史は日本よりはるかに古いのですが、こういった病変は日本人内視鏡医の努力によって、発見され、早期治療ができるようになったわけです。日本の内視鏡診断や治療技術は世界にほこるものがあります 。


これは、ポリープの中に癌ができたものです。

進行がん、早期がんと、どの様に分けているかというと、転移しているものを進行がんというのではなく、深達度といって、大腸にも筋肉があるわけですが、筋肉の層まで入り込んだものを進行がん、これより浅いものを早期がんとしています。当然、進行がんのほうが、転移しやすくなるわけですが。このくらいの大きさでは進行がんであっても、ほとんど症状はありません。ただ、S状結腸、直腸など肛門にちかいところでは出血で気がつくことがあります。
 
進行した癌の症状ですが、癌が大きくなると出血はおきます。肛門から近い直腸、S状結腸はこれで気がつくことが比較的多くあります、お腹がはったり、便が細くなったりするのはかなり腫瘍がおおきくなってでてくる通過障害の症状で、痛みは詰まりかけないとでません。また、上行結腸などの右側の肛門から遠い腸ほど、流れている便は液状ですので、知らないうちに、高度の貧血、血が薄くなっていることが多かったり、そうとう進行するまで通過障害による症状はでにくいといえます。